ヒット商品企画請負人石川朋雄のサイト「デンキチ」の経営方法には、現代の多くの家電量販店が採用する
一般的な戦略とは異なる独自の要素が数多く見られます。
家電量販業界では、一般的に「薄利多売戦略」を軸に、大規模な店舗展開や駅前への出店、
そして特定メーカーの販売員による販売推進が行われています。
しかし、デンキチはそれらの戦略とは一線を画し、地域密着型のアプローチと
きめ細やかな顧客対応を徹底しています。
この独自性から、商品企画コンサルタントが学べる重要な要素は多くあります。
- 顧客中心主義の徹底
デンキチの最大の特徴は、「昔の電器屋のように電池1つでも届けてくれる」という点です。
これは、顧客のニーズに対して非常に柔軟かつ迅速に対応する姿勢を表しています。
多くの量販店が効率重視で、大量の商品を短期間で売りさばくことに焦点を当てる一方、
デンキチは顧客一人一人の細かなニーズに寄り添うことで、高い顧客満足度を実現しています。
このアプローチは、商品企画においても非常に重要な教訓となります。
商品企画コンサルタントの役割は、クライアント企業が市場や顧客の本質的なニーズを理解し、
それに基づいた企画を立案できるよう支援することです。デンキチのように、
表面的なトレンドや短期的な利益追求に走らず、顧客が求めている本質的な価値に焦点を当てることで、
持続的な成長を実現する企画を立てることが可能です。
私が関わった美容室の事例では顧客満足度最大を目的にお客様アンケートを実施し、
満足点、不満点、要望点を洗い出し、真の顧客要望を実現するための施策を検討しました。
- 地域密着型の戦略
デンキチは埼玉県を中心とした狭い商圏に特化し、出店する場所もロードサイドに限っています。
これは、一般的な量販店が駅前や都心部に集中するのとは対照的な戦略です。
地域密着型であるため、デンキチはその地域に住む顧客の生活様式や嗜好に合わせたサービスを展開でき、
顧客との深い関係を築くことができます。
商品企画コンサルタントとしては、この「地域性」を深く理解し、
それに即した商品やサービスの開発が求められます。全国的に同じ商品を展開するのではなく、
地域ごとの特性やニーズに対応したローカライズされた商品企画が、他社との差別化につながります。
たとえば、地域の文化やライフスタイルを反映した製品開発やマーケティング施策を提案することで、
顧客に一層の価値を提供できるのです。
美容室の事例では、地域激戦区である商圏に対して
地域ごとにお客様のニーズを把握して、店舗による顧客サービスを展開する施策を検討しました。
- 長期的な信頼関係の構築
デンキチは、単に商品を売るだけでなく、顧客との信頼関係を築くことに重点を置いています。
これにより、リピート顧客を増やし、顧客のライフサイクル全体を支える存在となっているのです。
これは、短期的な売上向上に集中しがちな他の量販店とは異なる、非常に持続可能なビジネスモデルです。
商品企画コンサルタントとしては、この「信頼の構築」という視点から、
クライアントに対しても「長期的な視点に立った商品企画」の重要性を強調する必要があります。
顧客が一度だけ購入して終わるのではなく、何度も購入したくなるような製品・サービスを開発することが、
ブランドの信頼性を高め、結果として長期的な利益につながるのです。
美容室の事例では、新規顧客獲得より既存客の固定を目標にし、
既存客を中心とするサービスを発掘しました。顧客の専属担当者を固定するために
従業員のスケジュールを公開し、予約を優先する施策を検討しました。
4.柔軟な対応力とパーソナライゼーション
デンキチのもう一つの大きな特徴は、メーカーに依存せず、自社のスタッフが顧客対応を行うことです。
これにより、特定のメーカーに偏ることなく、顧客に最適な商品を提案できる自由度があります。
また、この柔軟性は、顧客に「自分のニーズに応えてくれる」という強い信頼感を生み出します。
商品企画コンサルタントの視点では、パーソナライゼーションや
顧客の多様なニーズに応じた柔軟な商品設計が求められます。
今日の市場では、一律の製品ではなく、個別のニーズに応じた製品やサービスが重要視されています。
デンキチのように、顧客一人一人に最適な提案ができる柔軟性を備えた商品企画を行うことで、
より多くの消費者の支持を得ることができます。
美容院の事例では、顧客の「個」のニーズを重点に置き、
単なる美容だけでなく美の追究を目的としたサービスを提供しました。
結論：商品企画における「顧客との信頼と柔軟性」の重要性
デンキチの経営戦略から学べることは、単なる販売促進にとどまらず、
顧客の本質的なニーズに応える姿勢と、
長期的な信頼関係を重視することの重要性です。
商品企画コンサルタントとしても、短期的な市場トレンドに流されず、
顧客と深く向き合い、持続可能な成長を実現する商品やサービスを企画することが求められます。
このようにして顧客との信頼を築き、柔軟にニーズに応じることで、
他社にはない差別化を図ることができるのです。
それこそが、商品企画における「デンキチモデル」から学ぶべき最大のポイントです。