行動観察(エスノグラフィー調査)や日記調査(セルフエスノグラフィー)は、
ユーザーが普段意識していない不満や欲求=潜在ニーズを明らかにする強力な手法です。
多くの顧客は、「何が不便なのか?」「どんな改善が必要か?」を自分で言語化できません。
従来のアンケートやヒアリングだけでは、すでに自覚している「顕在ニーズ」しか得られないため、
新しい価値の創造には限界があります。
潜在ニーズ発掘による売上向上戦略
潜在ニーズを発掘する調査手法
ユーザーが「言葉にできない」ニーズこそ、製品開発やマーケティングの差別化につながります。行動観察や日記調査を通して、「無意識の行動」や「習慣」に着目することで、競合他社が見逃している潜在ニーズを発掘できます。
🔍 主要な潜在ニーズ発掘手法
手法 | 発掘できる情報 | 潜在ニーズの例(デスクワーク用椅子) |
---|---|---|
行動観察 (エスノグラフィー) | 実際の使い方、環境、動作のクセ | 「背もたれを使わず、前傾姿勢が多い」→ 前傾姿勢に特化した椅子の開発 |
日記調査 (セルフエスノグラフィー) | ユーザー自身の気づき、時間経過による変化 | 「午後になると蒸れて不快」→ 通気性を高めた素材が必要 |
写真・動画記録 | ユーザーのリアルな環境や使用状況 | 「休憩中にストレッチをするスペースがない」→ 背伸び用の背もたれ設計 |
潜在ニーズから売上向上へのプロセス
①潜在ニーズを満たすことで、顧客満足度(CS)が向上
顕在ニーズ(例:高さ調整可能、デザイン性)だけでなく、潜在ニーズ(例:前傾姿勢のサポート、蒸れ防止)まで満たすと、満足度が大幅に向上します。競合製品との差別化が明確になり、「この製品でしか解決できない」という価値が生まれます。
②満足度が上がると、購入意向(PI:Purchase Intent)が向上
「この商品なら自分の悩みを解決できる」と感じたユーザーは、購入意向が高まります。商品の価値が明確に伝わることで、価格が多少高くても納得して購入するようになります。
③購入意向が向上すると、売上に貢献
高い満足度はNPS(ネットプロモータースコア)の向上につながり、口コミによる顧客獲得が加速します。また、競争力のあるポジショニング確立により、価格競争を回避し、高付加価値商品として販売することが可能になります。
成功事例① リクライニング機能付きオフィスチェア
課題(顕在ニーズのみ対応していた状態)
- ユーザー調査で「座り心地が良い椅子が欲しい」という声に応え、高級クッションを採用
- しかし、購入意向は期待より低く、競争力が発揮できなかった
潜在ニーズ発掘(行動観察・日記調査の結果)
結果
90°~135°のリクライニングを採用した結果、購入意向が25%増加し、売上が1.8倍に拡大
成功事例② 在宅ワーク向けデスク
課題(顕在ニーズのみ対応していた状態)
- 「広い作業スペースが欲しい」という要望に応え、大きめのデスクを開発
- しかし、「部屋に置けない」「見た目が圧迫感がある」と不満が発生
潜在ニーズ発掘(行動観察・日記調査の結果)
結果
折りたたみデスクを開発し、購入意向が20%向上、初年度売上が50%増加
実践のポイント
🎯 潜在ニーズ発掘のための3つのステップ
複数の調査手法を組み合わせる
行動観察だけでなく、日記調査や写真・動画記録も活用することで、より深い洞察を得られます。
「なぜ?」を5回繰り返す
表面的な行動や発言の背後にある本質的なニーズを探るために、「なぜそうするのか?」という問いを掘り下げます。
定量データと定性データを組み合わせる
行動観察(定性)で発見したニーズが、どの程度の規模で存在するかを調査(定量)で検証します。
まとめ:なぜ行動観察・日記調査が売上につながるのか?
(1)顧客自身が気づいていない不満を発掘できる(顕在ニーズだけでは競争力が不足)
(2)潜在ニーズに対応した商品は、競合との差別化が可能(唯一無二の価値を提供)
(3)顧客満足度が向上すると、購入意向が高まり、売上増加につながる(PIスコア向上 → 購買確率UP)